郷土菓子

貝殻形の皮に、カスタードとさくらんぼを添える

サンタローザ

santarosa[santaˈrɔza](イタリア語) / sfogliatella Santa Rosa(伝統食品の一覧での名)

主な土地
イタリア・アマルフィ海岸Italia / Costiera Amalfitana
分類
焼き菓子
主材料
小麦粉・セモリナ粉・リコッタチーズ・カスタードクリーム・さくらんぼ
地方
カンパニア州 / サレルノ県
記録の年
2010
図版
2点
金色のトレーに、細い筋の入った貝殻の形の焼き菓子が並ぶ大写し。表面は粉砂糖で白く、皮の口から黄色いクリームがはみ出し、黒っぽい赤のさくらんぼがのっている
図1サンタローザ。粉砂糖をふった層の皮の口から、カスタードクリームがのぞき、その上に濃い色のさくらんぼがのる。撮影地と撮影日の記録は無い写真:Mess/ウィキメディア・コモンズ(CC BY-SA 3.0)
金属のトレーに、筋の入った貝殻の形の焼き菓子が6つ。どれも上に黄色いクリームを波の形に絞り、赤いさくらんぼをのせている。奥に青い値札「SANTA ROSA €2,50」
図2ナポリの菓子店のショーケースに並ぶサンタローザ。層の皮の上にカスタードを波のように絞り、赤いさくらんぼをのせる。値札に「SANTA ROSA €2,50」(2010年5月、ナポリの Attanasio)

定義

サンタローザ(santarosa)は、ナポリと同じカンパニア州の、アマルフィ海岸とサレルノの焼き菓子だ。薄い層を何重にも重ねた皮で、との詰め物を包んで焼き、カスタードクリームとシロップ漬けのアマレーナ(amarena)で飾る。アマレーナは、ほんのり苦みのあるさくらんぼだ。

皮は、ナポリの焼き菓子スフォリアテッレ(sfogliatelle)のうち、薄い生地を何重にも重ねた貝殻の形の「リッチャ(riccia)」と同じだ。カンパニア州の以前の説明は、リッチャより大きめとする。アマルフィの菓子店パンサ(Pansa)では、皮の口からカスタードがあふれる形にして、アマレーナを添える。

由来

名は、ペルーのリマの聖女ローザ(Santa Rosa da Lima)の名だ。アメリカ大陸で最初の聖人で、1671年に聖人とされた。アマルフィ海岸の町コンカ・デイ・マリーニ(Conca dei Marini)には、この聖女に捧げた女子修道院があり、菓子の名はこの修道院から来たと語られる。修道院は1681年にでき、いまはホテルになっている。

菓子も、この修道院で修道女が作り出したと語られる。毎年8月30日の聖ローザの日に、町の家々と、修道院を助けた家々に贈ったという。いつのことかは、カンパニア州のいまの説明が1600年代、以前の説明とアマルフィの菓子店パンサが1700年代のはじめとしている。

ナポリのスフォリアテッレとの関係も、見方が分かれる。カンパニア州の見方では、サンタローザのほうが先で、ナポリに伝わってリッチャになった。ナポリの食の記事や旅の案内は、ここに言い伝えを足す。ナポリで店を営んでいたパスクアーレ・ピンタウロ(Pintauro)が、1818年ごろ修道院のレシピを盗み出し、クリームとアマレーナを外して作り変えたという。一方、2000年のイタリアの新聞記事は、修道女が作ったこの菓子を「定番のスフォリアテッレの変わり種」と書いている。

サンタローザの名が本に出てくるのは、1990年代はじめの英語の食の案内からだ。カスタードを詰めた、ぱりっとした菓子として挙げている。国の伝統食品の一覧(PAT)にも、2000年の最初の版から、スフォリアテッレとは別の品として載る。それぞれの州が、土地の伝統の食品と認めたものを、国がまとめた一覧だ。

分布

サレルノとアマルフィ海岸の菓子で、アマルフィの菓子店パンサも店の品に入れている。ナポリにも売る菓子店があり、2019年の記事によれば、ガラス屋根の商店街ガッレリア・ウンベルトの入口の菓子店ラ・スフォリアテッラ・マリー(La Sfogliatella Mary)では2.50ユーロ。ふつうのスフォリアテッレは1.80ユーロだった。

ナポリの菓子店の一軒で見たサンタローザは、パンサの形とは違い、皮の上にカスタードを波のように絞って、赤いさくらんぼをのせていた。ショーケースのトレーに、「SANTA ROSA」と書いた札とともに並んでいた。

構造と製法

いまの作り方では、詰め物はセモリナ粉とリコッタチーズに、砂糖漬けの果物と卵、砂糖を混ぜ、シナモンで香りをつける。皮は、小麦粉と塩と水を長くこねた生地で、薄い層が縮れたように重なる。仕上げは、カスタードクリームとシロップ漬けのアマレーナ。アマルフィのパンサの品では、皮の生地にと砂糖も入り、材料には砂糖漬けのオレンジもある。

昔の作り方も、カンパニア州の説明に残る。中身は、セモリナと牛乳と砂糖に、甘い酒でもどした干した果物を合わせたもの。皮は、パン生地にラードと砂糖と少しのワインを加えてのばした、もろい生地だ。中身を皮2枚ではさみ、修道女がかぶる頭巾の形にして焼いたという。いまの貝殻の形になるまでに、形は変わっていった。

供される場面

修道院が菓子を贈ったと語られる8月30日は、1970年まで聖ローザの祝日だった。コンカ・デイ・マリーニでは夏にこの菓子の祭りが開かれ、1990年代の案内書にも出てくる。いまは毎年8月の終わりに、町と地元の会が「サンタローザの日(Il giorno della Santarosa)」の夕べを開いている。

2024年に始まった催しで、菓子職人や料理人が料理と菓子を出し、町の通りで食べ歩く。音楽もあり、修道院長が町の人へ菓子を贈った昔のならわしを、再現するとうたっている。祭りの日に限らず、ふだんの店の品として並べる菓子店もある。アマルフィのパンサの品にあり、ナポリのマリーも2019年には出していた。

この冬、確かめたいこと

ナポリでは、ガッレリア・ウンベルトの菓子店ラ・スフォリアテッラ・マリーが、2019年にサンタローザを出していた。12月の店先にも並ぶのか、ほかの菓子店のショーケースでも見かけるのか。札の綴りは「Santa Rosa」なのか、「Santarosa」なのか。

ナポリの菓子店のものは、パンサのように皮の口からカスタードをあふれさせるのか、上に絞るのか。上にのせるさくらんぼが、州の説明にあるシロップ漬けのアマレーナかどうかも見ておきたい。隣に並ぶリッチャと比べて、大きさはどれほど違うのか。皮の歯ざわりや甘さ、さくらんぼの苦みも、食べて確かめたい。

文献の記録

年記録資料
1992英語の食の案内に「Sfogliatelle di Santa Rosa」。カスタードを詰めた、ぱりっとした菓子で、毎年7月の終わりか8月のはじめに、サレルノに近いコンカ・デイ・マリーニでこの菓子の祭りがあるスーザン・コンテ『Essential Food & Drink Italy』(AA。年は図書館の目録による。祭りの段は、同じ文の『The Daily Telegraph Essential Food & Drink Guide: Italy』〈目録1993〉で読んだ。題扉・奥付は見られず、本文は全文検索の抜粋だけ読んだ)
1997ナポリの案内に、修道院の名から「santarosa」と呼んだ菓子で、あさりの殻の形をしていた、とある。ナポリではパスクアーレ・ピンタウロが1700年代に作り変えた、とするマルチェッロ・ドルタ『Il sole ventiquattrore: a spasso per Napoli』(ミラノ、Zelig)61〜62頁と見られる(年は図書館の目録による。本文は全文検索の抜粋だけ読んだ)
2000コンカ・デイ・マリーニの修道院(1681年創設)で修道女が作った菓子として紹介。修道女の頭巾の形で、アマレーナをのせ、甘いリコッタ・セモリナ・砂糖漬けの果物を詰めた「定番のスフォリアテッレの変わり種」ガエターノ・アフェルトラ「I dolci segreti di Santa Rosa, magico convento」(Corriere della Sera、2000年7月12日、37頁)(原文を開く)
2000国の伝統食品の一覧(PAT)の最初の版で、カンパニア州の90番に「sfogliatella santa rosa」。89番の「sfogliatella」とは別の品イタリアの官報(2000年8月21日、194号付録130号)17頁(原文を開く)
2006カンパニア州の説明。サンタローザはリッチャの変わり種で大きめ。スフォリアテッラの祖先は、1700年代のはじめにコンカ・デイ・マリーニの修道院の修道女が作った「サンタ・ローザのトルタ」で、形は小さくなり、いまのリッチャになった、とするカンパニア州農業部「Sfogliatella Santa Rosa」(2006年6月7日の更新。ウェブ・アーカイブの写し)(原文を開く)
2009カンパニア州の説明が書き換わる。1600年代にコンカ・デイ・マリーニの修道院で考え出され、ナポリではリッチャに変わり、サレルノとアマルフィ海岸では元の作り方をもとに作られてきた。毎年8月30日に、町の家々や修道院を助けた家のために作った、とするカンパニア州農業部「Sfogliatella Santa Rosa」(2009年6月7日の文。いまの頁は2019年8月29日更新で同じ文)(原文を開く)
2009ナポリの案内の菓子店ピンタウロの項に、言い伝えとして、1818年ごろパスクアーレ・ピンタウロがアマルフィの修道院から、サンタローザという豊かなスフォリアテッレのレシピを盗んだ、とある『Time Out Naples』(ロンドン、Time Out Guides)132頁と見られる(索引による。年は図書館の目録による。本文は全文検索の抜粋だけ読んだ)
2024コンカ・デイ・マリーニ町が8月30日に「Il giorno della Santarosa」を開く。修道院長が聖ローザの日に町の人へ菓子を贈ったならわしを再現するとうたう。2025年は8月28日コンカ・デイ・マリーニ町の頁(2024年8月22日更新)。2025年は amalficoast.com(2025年8月23日)(原文を開く)
2026国の一覧の2026年の改訂で、カンパニア州の506番「Sfogliatella Santa Rosa」(505番は「Sfogliatella」)イタリア農業省の省令(2026年2月6日)の州ごとの表(カンパニア州農業部の頁に載る)(原文を開く)
2026「Il giorno della Santarosa」の3回目を8月27日に開く。町と組んだ地元の会 La Compagnia della Santarosa が考えた催しで、町の通りに料理と菓子が並ぶLa Compagnia della Santarosa の第1報(2026年8月)(原文を開く)

観察記録

№年月町所見
012010.05.01()ナポリショーケースのトレーに、層の皮の上にカスタードを波のように絞り、赤いさくらんぼをのせたもの。値札に「SANTA ROSA €2,50」

この菓子を買った店

  • Scaturchioナポリ・イタリア2010.05.02
  • SCARINGIミラノ・イタリア2012.04.17
  • Panarelloミラノ・イタリア2012.04.17

店名は写真の看板・値札・紙袋から起こしたもの。住所は写真に写っていたもの、または後から調べて確かめたもの。

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