郷土菓子

ジャムを包んで折る、聖ヨセフの日の半月

ラヴィオラ

Raviola[raˈvjɔːla]

発祥
イタリア・ボローニャItalia / Bologna
分類
焼き菓子
主材料
小麦粉・バター・砂糖・卵・モスタルダ(果物のジャム)
地方
エミリア=ロマーニャ州 / ボローニャ県
記録
2件
期間
2010
図版
2点
ローマボローニャ
イタリアボローニャ
ローマボローニャ
イタリアボローニャ
白い紙の上に、粒の砂糖を散らした半月形の焼き菓子と、粉砂糖をふった三角に折った焼き菓子
図1左がラヴィオラ。粒の砂糖を散らした半月形。右は三つ角に折ったカペッロ・デル・プレーテ(Cappello del prete)。2010年5月、ボローニャの Billi で
金属のトレイに、粒の砂糖を散らした半月形の焼き菓子がたくさん並ぶ
図2ショーケースに積まれたラヴィオラ。5月にも並んでいた(2010年5月、ボローニャの Lo Sfizio)

定義

ラヴィオラは、ボローニャの半月形の焼き菓子だ。丸くのばしたクッキーのような生地()に甘い詰め物をのせ、二つに折って窯で焼く。いまの詰め物は、マルメロなどの果物を煮詰めた色の濃いジャム「」か、アプリコットのジャムが定番。3月19日、聖ヨセフの日(キリストの父ヨセフを祝う日)の菓子として知られる。

由来

ラヴィオラは、パスタのラヴィオリ(raviolo)と同じ言葉で、もとは菓子の名ではなかった。200年ほど前のボローニャでは、などのチーズに卵と香草を混ぜ、小さく分けてバターで焼き色をつける料理をこう呼んでいた。そのころの辞典には、もう一つの意味も載っている。ナポレオンの肖像でおなじみの、左右に角の出た帽子(二角帽)だ。食べ物の形に似ているので、帽子もラヴィオラと呼ばれた。のちの半月形の菓子も、ちょうどこの帽子の形をしている。

甘いラヴィオラが記録に出てくるのは、19世紀の後半だ。ボローニャの新聞は、聖ヨセフの日に菓子屋の窓にラヴィオラが並ぶ様子を書き、「聖ヨセフにはラヴィオラを作る」と歌った。20世紀のはじめの方言辞典になると、丸い生地を折ってジャムや果物を包む菓子として載り、「昔からの習わしで聖ヨセフの日に食べる」と添えられる。

昔は生け垣に吊るして春の始まりを知らせた、という話もよく語られる。聖ヨセフの日に道沿いの生け垣へラヴィオラを差す場面は、20世紀の後半に出た小説に描かれている。

分布

ボローニャとその周りの菓子屋やパン屋で作られる。20世紀前半の新聞は、聖ヨセフの日には「どの家でも」ラヴィオラを食べると書いている。近くの町トレッボ・ディ・レーノでは、毎年3月に「ラヴィオラ祭り」が開かれる。

聖ヨセフの日から一月以上たった5月のはじめにも、ボローニャの菓子屋のショーケースには、粒の砂糖を散らしたラヴィオラが積まれていた。アプリコットとモスタルダの二種類を置く店もある。

構造と製法

生地は、小麦粉にバターと砂糖、卵を合わせたパスタ・フロッラ。丸く抜いて詰め物をのせ、半分に折って縁を閉じ、表面に卵を塗って焼く。焼き上がりに、粒の砂糖や粉砂糖をかけることが多い。1930年代の案内書は、中身を「アーモンドの練り物か、ジャム」と書いている。

中に入れるモスタルダは、ボローニャでは果物を煮詰めた甘いジャムのことだ。19世紀の辞典によれば、昔は辛子も加えていたが、いまのものには入らない。北イタリアのクレモナで同じ名前で呼ぶのは、砂糖漬けの果物を辛子のきいたシロップに漬けたもので、まるで別物だ。

ボローニャで持ち帰ったものは、手でつまめる大きさの半月形で、表面に粒の砂糖が散り、焼き色はこんがりとしていた。割ると、ホロッと崩れる生地の中にジャムが包まれている。

変種と周辺

同じ生地と詰め物で、三つの角を立てるように折った菓子もある。ボローニャのある菓子屋は、これを「カペッロ・デル・プレーテ(Cappello del prete、司祭の帽子)」と呼んでいた。三つ角の帽子の形を、そのまま名前にしている。

モスタルダは、ボローニャのクリスマスの菓子、ピンツァの中身にも使われる。20世紀のはじめの辞典は、ピンツァを「干しぶどうとモスタルダを入れた、農家のクリスマスの菓子」と書く。小さく一つずつ折るのが春のラヴィオラ、細長く巻いて切り分けるのが冬のピンツァ。同じ生地と同じジャムで、季節の行事ごとに形を変えている。

供される場面

ボローニャでは、聖ヨセフの日は冬の夜なべ仕事が終わり、畑の仕事が始まる日ともされていた。その日に食べる菓子がラヴィオラで、1940年の新聞は「小さな金色の二角帽の形」と書いている。春の聖ヨセフにラヴィオラ、初夏の祭りにトルタ・ディ・リーゾと、町の暦に決まった菓子が並んでいた。

記録から見えること

ボローニャで出会った2件は、どちらも聖ヨセフの日から一月以上あとの5月のものだ。それでも菓子屋のショーケースにはラヴィオラが積まれ、町はずれの古い店にも置かれていた。行事の菓子が、ふだんの菓子屋の品にもなっている。

ローマボローニャ
イタリアボローニャ

文献の記録

年記録資料
1820方言辞典のラヴィオラは「チーズ・卵・香草の料理」。甘い菓子の意味は無いフェッラーリ『ボローニャ方言・イタリア語辞典』(原文を開く)
1835ラヴィオラに「たとえて、二つ角の帽子」の意味が加わるフェッラーリ『ボローニャ方言・イタリア語辞典』第2版(原文を開く)
1877聖ヨセフの日に菓子屋の窓にラヴィオーレ。「聖ヨセフにはラヴィオーレを作る」ボローニャの新聞『ラ・ラーナ』(原文を開く)
1901辞典に甘いラヴィオラ。丸い生地を折ってジャムや果物を包み、昔から聖ヨセフの日に食べるウンガレッリ『ボローニャ方言辞典』(原文を開く)
1931「アーモンドの練り物かジャムを詰めた、パスタ・フロッラのラヴィオリ。聖ヨセフの祭りに作る」イタリア旅行クラブ『イタリア美食案内』(原文を開く)
1940聖ヨセフの日には「どの家でも」名高いラヴィオーレを食べる。「小さな金色の二角帽の形」『イル・レスト・デル・カルリーノ』紙(原文を開く)

観察記録

№年月町所見
012010.05.04(手書きの旅日記)ボローニャアプリコットとモスタルダのラヴィオーレ。ショーケースには、粒の砂糖を散らした半月形のものが積まれていた手書きの旅日記
022010.05.04(手書きの旅日記)ボローニャラヴィオラと、三つ角に折ったカペッロ・デル・プレーテを持ち帰った手書きの旅日記
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