郷土菓子

アーモンドと砂糖の練り物を、小さく焼く

マサパン

Mazapán[maθaˈpan](スペイン語) / Massapà(カタルーニャ語。Casa Colomina の札の綴りは masapá) / Figuretes de massapà(カタルーニャ語)/Figuritas de mazapán(スペイン語):小さな形のマサパン

発祥
スペイン・バルセロナEspaña / Barcelona
分類
焼き菓子
主材料
アーモンド・砂糖
地方
カタルーニャ州 / バルセロナ県
記録
1件
期間
2010
図版
7点
マドリードバルセロナ
スペインバルセロナ
マドリードバルセロナ
スペインバルセロナ
透明な箱に、渦巻きや結び目の形の、上に焼き色のついた小さな菓子が詰まる。黄色いリボンと、黒と青の二行の白い札
図1小さな形のマサパンの箱。札は上にカタルーニャ語で Caixa de figuretes de masapá、下にスペイン語で Caja de figuritas de mazapan、9ユーロ。渦巻きや結び目の形に、上だけ焼き色(2010年5月、バルセロナの Casa Colomina で)
古い本の扉。TESORO DE LA LENGVA CASTELLANA, O ESPAÑOLA の題と、下に王家の紋章、Año del Señor M.DC.XI
図2コバルビアス『カスティーリャ語宝典』(1611年、マドリード刊)の扉。この辞書がマサパンを「小さな丸い形にして窯で焼く」と説明したSebastián de Covarrubias Orozco, Tesoro de la lengua castellana o española (Madrid, 1611) / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
透明な袋に焼いた小さな菓子が詰まり、白いラベルが貼られている。前に値段の札
図3袋入りの小さなマサパン。札は Bossetes de figuretes/Bolsitas de figuritas、小1.95ユーロ・大4.85ユーロ。袋のラベルに CASA COLOMINA TORRONS I DOLÇOS と「Abril 2.011」(2010年5月、バルセロナで)
白い布の上に、淡いクリーム色の小さな焼き菓子が三つ。渦巻き形、結び目形、鳥の形で、上の先だけ茶色く焼けている
図4箱から出した三つ。渦巻き、結び目、首をもたげた小鳥。上の出っぱりにだけ焼き色とつや(2010年5月、バルセロナで)
古い白黒写真。天井の低い作業場で、白い服の男たちが長い台を囲み、台の上の生地の塊を手で練っている
図5トレドのマサパンの工房で、長い台を囲んで生地を練る人たち。雑誌『ブランコ・イ・ネグロ』1897年12月25日号の記事「トレドのマサパン」の写真写真:Federico Latorre y Rodrigo(『Blanco y Negro』347号)/ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
古い白黒写真。作業台に丸い箱が積まれ、女性や男性が座って箱に飾りを付けている
図6マサパンを詰める箱を飾る人たち(トレド)。同じ1897年12月25日(クリスマス)号の記事から写真:Federico Latorre y Rodrigo(『Blanco y Negro』347号)/ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
透明なトレーの中央に、焼き色のついた小さな菓子が三つと白い粒。まわりを四角いトゥロンと紙包みの菓子が囲む
図7トゥロンの詰め合わせの箱の真ん中に、渦巻きと結び目と小鳥のマサパン、白い砂糖がけのアーモンド(2010年5月、バルセロナで)

定義

マサパン(mazapán)は、挽いたアーモンドと砂糖を練り合わせた生地を小さく形づくり、窯で焼いたスペインの菓子だ。表面にうっすらと焼き色がつく。カタルーニャ語ではマサパ(massapà)と呼び、小さな形にしたものは「マサパの小さな形(figuretes de massapà)」という。ドイツのリューベックで知られる白いと材料はほぼ同じで、違うのは窯に入れて仕上げるところ。

由来

アーモンドと砂糖を練り合わせる菓子は、10世紀のバグダードの料理書にもう出てくる。名前のほうは、もとは菓子を入れる箱の名だった。カタルーニャ語の古い文書で massapà と呼ばれているのは、砂糖菓子や松の実、を煮詰めて固めた板を詰めておく箱だ。15世紀の後半になると、同じ言葉が帳簿の中で菓子そのものを指すようになる。箱の名が、中身の名に移ったと考えられている。

同じ15世紀には、カタルーニャ語の菓子の本に作り方も残っている。アーモンドに同じ重さの砂糖を合わせ、薄いウエハースにのせて、窯で少し焼く。焼いて仕上げるところは、もう今のマサパンと変わらない。

16世紀に入ると、話の舞台は中部のトレドに移る。カタルーニャ語の料理書がスペイン語に訳されてこの町で出版され、そこにもマサパンの作り方が載った。17世紀のはじめには、スペイン語の辞書がマサパンを「小さな丸い形にして窯で焼く」菓子と説明し、トレドの菓子職人の組合も規則を定めている。いまもスペインでマサパンの町といえば、トレドだ。町では始まりについて、1212年の飢饉のとき、サン・クレメンテ修道院の修道女が、小麦の代わりに蓄えのアーモンドと砂糖でパンを焼いて配った、と語られる。

分布

トレドのマサパンには決まりがあって、トレド県で作ったものだけが「トレドのマサパン(Mazapán de Toledo)」を名乗れる。アーモンドを重さの半分以上使うことも、その決まりの一つで、使うのは脂肪の多い甘いアーモンド、出来上がりの脂肪分にも下限がある。

バルセロナのトゥロンの老舗 Casa Colomina では、小さな形のマサパンが透明な箱入りと袋入りで売られていた。札には、上にカタルーニャ語、下にスペイン語と、名前が二つ並ぶ。箱は9ユーロ、袋は小さいほうが1.95ユーロ、大きいほうが4.85ユーロ。積み上げたトゥロンの塊と同じケースに置かれている。

構造と製法

トレドの決まりでは、生地は、生のまま皮をむいて挽いたアーモンドに砂糖を合わせて練った、きめの細かい締まった練り物。混ぜて、挽いて、練って、包むのが手順だ。決まりが定めるのは生地のほうで、形までは決めていない。15世紀のカタルーニャ語の菓子の本では、アーモンドを挽くのではなく、鉢に入れて棒で少しずつつぶし、薄いウエハースにのせて窯で焼いていた。

Casa Colomina の小さなマサパンは、渦巻き、結び目、首をもたげた小鳥の形をしている。生地は淡いクリーム色で、上の出っぱったところにだけ、濃い焼き色とつやがのる。袋の札にある賞味期限は、店に並んでからおよそ11カ月先。日もちのする菓子として売られている。食べると素朴な味で、アーモンドがやさしく香る。

変種と周辺

カタルーニャで決まった日に食べるマサパンの代表が、パナリェッツ(panellets)だ。マサパンの生地を小さく丸め、松の実などをまぶして焼いた菓子で、11月1日の諸聖人の日に栗と一緒に食べる。18世紀の終わりには、バルセロナの旧市街の通りに栗とパナリェッツの市が立ち、1796年には200を超える屋台が出た。昔は「魂のパン」と呼ばれ、かごごと教会で祝福を受けたという。

アーモンドと砂糖の練り物は、地中海のあちこちで形を変えている。ポルトガル南部のアルガルヴェでは、中に卵黄の餡を包み、果物や野菜そっくりにかたどる。スペインの名前は海も渡った。メキシコでマサパンといえば、アーモンドではなくピーナッツで作る、焼かずに押し固めた円盤の菓子だ。

供される場面

トレドでは、マサパンはクリスマスに箱で贈るものだった。1890年ごろにこの町を舞台に書かれた小説には、クリスマスの午後に「サン・クレメンテのマサパン」を贈り物に持たせる場面や、毎年クリスマスにマサパンの箱を受け取る人が出てくる。季節になると、マサパンの箱を作る仕事に出る男もいる。修道院のマサパンは、このころにはもう名高かったのだ。

バルセロナの Casa Colomina では、クリスマスから遠い5月にも、小さな形のマサパンが箱や袋に詰めて置かれていた。トゥロンを詰めた箱の中にも、渦巻きと結び目と小鳥の形が一つずつ、白い砂糖がけのアーモンドと一緒に入っている。

マドリードバルセロナ
スペインバルセロナ

文献の記録

年記録資料
1380〜1430カタルーニャ語の文書の marçapà は、砂糖菓子・松の実・マルメロの板を入れる箱カタルーニャ語大辞典(DCVB)の用例
15世紀アーモンドをつぶして同じ重さの砂糖と合わせ、ウエハースにのせて窯で少し焼く作り方カタルーニャ語の菓子の本(DCVB の引用)
1470バレンシアの帳簿に、菓子の marçapans 50個DCVB の用例(バレンシア王国文書館)
1490騎士物語の豪勢な軽食に、ほかの砂糖菓子と並んでマサパンが出る『ティラン・ロ・ブラン』45章(DCVB の引用)
1525バルセロナで出た料理書のスペイン語版がトレドで出る。「Mazapanes」の作り方ルペルト・デ・ノーラ『料理の書』(原文を開く)
1611「砂糖とアーモンドの甘い練り物で、小さな丸い形にして窯で焼く」コバルビアス『カスティーリャ語宝典』(原文を開く)
1613トレドの菓子職人の組合の規則(年が条例集の序文に並ぶ)『トレド市条例集』(1858)序文(原文を開く)
1796バルセロナの栗とパナリェッツの市に200を超える屋台カタルーニャ州農業局「パナリェッツ」
1890クリスマスの贈り物に「サン・クレメンテのマサパン」、毎年届くマサパンの箱ペレス・ガルドス『アンヘル・ゲラ』(原文を開く)
2008トレド県で作ったものだけが「トレドのマサパン」を名乗れる、と決めた仕様書が有効にスペイン農業省「トレドのマサパン」(原文を開く)

観察記録

№年月町所見
012010.05.21(手書きの旅日記・著者への聞き取り)バルセロナ渦巻き・結び目・小鳥の形の小さなマサパン。上だけに焼き色。札はカタルーニャ語とスペイン語の二通りで、箱9ユーロ、袋は小1.95ユーロ・大4.85ユーロ。トゥロン・ポルボロンとの詰め合わせの箱で買い、5月24日の夜にトゥロンと一緒に食べた。素朴な味で、アーモンドがやさしい手書きの旅日記・著者への聞き取り

この菓子を買った店

  • Casa Colominaバルセロナ・スペイン2010.05.22
  • Dulces Martínバレンシア・スペイン2010.05.27

店名は写真の看板・値札・紙袋から起こしたもの。住所は写真に写っていたもの、または後から調べて確かめたもの。

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