アーモンドと砂糖の練り物を、小さく焼く
マサパン
Mazapán[maθaˈpan](スペイン語) / Massapà(カタルーニャ語。Casa Colomina の札の綴りは masapá) / Figuretes de massapà(カタルーニャ語)/Figuritas de mazapán(スペイン語):小さな形のマサパン
- 発祥
- スペイン・バルセロナEspaña / Barcelona
- 分類
- 焼き菓子
- 主材料
- アーモンド・砂糖
- 地方
- カタルーニャ州 / バルセロナ県
- 記録
- 1件
- 期間
- 2010
- 図版
- 7点







定義
マサパン(mazapán)は、挽いたアーモンドと砂糖を練り合わせた生地を小さく形づくり、窯で焼いたスペインの菓子だ。表面にうっすらと焼き色がつく。カタルーニャ語ではマサパ(massapà)と呼び、小さな形にしたものは「マサパの小さな形(figuretes de massapà)」という。ドイツのリューベックで知られる白いと材料はほぼ同じで、違うのは窯に入れて仕上げるところ。
由来
アーモンドと砂糖を練り合わせる菓子は、10世紀のバグダードの料理書にもう出てくる。名前のほうは、もとは菓子を入れる箱の名だった。カタルーニャ語の古い文書で massapà と呼ばれているのは、砂糖菓子や松の実、を煮詰めて固めた板を詰めておく箱だ。15世紀の後半になると、同じ言葉が帳簿の中で菓子そのものを指すようになる。箱の名が、中身の名に移ったと考えられている。
同じ15世紀には、カタルーニャ語の菓子の本に作り方も残っている。アーモンドに同じ重さの砂糖を合わせ、薄いウエハースにのせて、窯で少し焼く。焼いて仕上げるところは、もう今のマサパンと変わらない。
16世紀に入ると、話の舞台は中部のトレドに移る。カタルーニャ語の料理書がスペイン語に訳されてこの町で出版され、そこにもマサパンの作り方が載った。17世紀のはじめには、スペイン語の辞書がマサパンを「小さな丸い形にして窯で焼く」菓子と説明し、トレドの菓子職人の組合も規則を定めている。いまもスペインでマサパンの町といえば、トレドだ。町では始まりについて、1212年の飢饉のとき、サン・クレメンテ修道院の修道女が、小麦の代わりに蓄えのアーモンドと砂糖でパンを焼いて配った、と語られる。
分布
トレドのマサパンには決まりがあって、トレド県で作ったものだけが「トレドのマサパン(Mazapán de Toledo)」を名乗れる。アーモンドを重さの半分以上使うことも、その決まりの一つで、使うのは脂肪の多い甘いアーモンド、出来上がりの脂肪分にも下限がある。
バルセロナのトゥロンの老舗 Casa Colomina では、小さな形のマサパンが透明な箱入りと袋入りで売られていた。札には、上にカタルーニャ語、下にスペイン語と、名前が二つ並ぶ。箱は9ユーロ、袋は小さいほうが1.95ユーロ、大きいほうが4.85ユーロ。積み上げたトゥロンの塊と同じケースに置かれている。
構造と製法
トレドの決まりでは、生地は、生のまま皮をむいて挽いたアーモンドに砂糖を合わせて練った、きめの細かい締まった練り物。混ぜて、挽いて、練って、包むのが手順だ。決まりが定めるのは生地のほうで、形までは決めていない。15世紀のカタルーニャ語の菓子の本では、アーモンドを挽くのではなく、鉢に入れて棒で少しずつつぶし、薄いウエハースにのせて窯で焼いていた。
Casa Colomina の小さなマサパンは、渦巻き、結び目、首をもたげた小鳥の形をしている。生地は淡いクリーム色で、上の出っぱったところにだけ、濃い焼き色とつやがのる。袋の札にある賞味期限は、店に並んでからおよそ11カ月先。日もちのする菓子として売られている。食べると素朴な味で、アーモンドがやさしく香る。
変種と周辺
カタルーニャで決まった日に食べるマサパンの代表が、パナリェッツ(panellets)だ。マサパンの生地を小さく丸め、松の実などをまぶして焼いた菓子で、11月1日の諸聖人の日に栗と一緒に食べる。18世紀の終わりには、バルセロナの旧市街の通りに栗とパナリェッツの市が立ち、1796年には200を超える屋台が出た。昔は「魂のパン」と呼ばれ、かごごと教会で祝福を受けたという。
アーモンドと砂糖の練り物は、地中海のあちこちで形を変えている。ポルトガル南部のアルガルヴェでは、中に卵黄の餡を包み、果物や野菜そっくりにかたどる。スペインの名前は海も渡った。メキシコでマサパンといえば、アーモンドではなくピーナッツで作る、焼かずに押し固めた円盤の菓子だ。
供される場面
トレドでは、マサパンはクリスマスに箱で贈るものだった。1890年ごろにこの町を舞台に書かれた小説には、クリスマスの午後に「サン・クレメンテのマサパン」を贈り物に持たせる場面や、毎年クリスマスにマサパンの箱を受け取る人が出てくる。季節になると、マサパンの箱を作る仕事に出る男もいる。修道院のマサパンは、このころにはもう名高かったのだ。
バルセロナの Casa Colomina では、クリスマスから遠い5月にも、小さな形のマサパンが箱や袋に詰めて置かれていた。トゥロンを詰めた箱の中にも、渦巻きと結び目と小鳥の形が一つずつ、白い砂糖がけのアーモンドと一緒に入っている。
文献の記録
| 年 | 記録 | 資料 |
|---|---|---|
| 1380〜1430 | カタルーニャ語の文書の marçapà は、砂糖菓子・松の実・マルメロの板を入れる箱 | カタルーニャ語大辞典(DCVB)の用例 |
| 15世紀 | アーモンドをつぶして同じ重さの砂糖と合わせ、ウエハースにのせて窯で少し焼く作り方 | カタルーニャ語の菓子の本(DCVB の引用) |
| 1470 | バレンシアの帳簿に、菓子の marçapans 50個 | DCVB の用例(バレンシア王国文書館) |
| 1490 | 騎士物語の豪勢な軽食に、ほかの砂糖菓子と並んでマサパンが出る | 『ティラン・ロ・ブラン』45章(DCVB の引用) |
| 1525 | バルセロナで出た料理書のスペイン語版がトレドで出る。「Mazapanes」の作り方 | ルペルト・デ・ノーラ『料理の書』(原文を開く) |
| 1611 | 「砂糖とアーモンドの甘い練り物で、小さな丸い形にして窯で焼く」 | コバルビアス『カスティーリャ語宝典』(原文を開く) |
| 1613 | トレドの菓子職人の組合の規則(年が条例集の序文に並ぶ) | 『トレド市条例集』(1858)序文(原文を開く) |
| 1796 | バルセロナの栗とパナリェッツの市に200を超える屋台 | カタルーニャ州農業局「パナリェッツ」 |
| 1890 | クリスマスの贈り物に「サン・クレメンテのマサパン」、毎年届くマサパンの箱 | ペレス・ガルドス『アンヘル・ゲラ』(原文を開く) |
| 2008 | トレド県で作ったものだけが「トレドのマサパン」を名乗れる、と決めた仕様書が有効に | スペイン農業省「トレドのマサパン」(原文を開く) |
観察記録
| № | 年月 | 町 | 所見 | |
|---|---|---|---|---|
| 01 | 2010.05.21(手書きの旅日記・著者への聞き取り) | バルセロナ | 渦巻き・結び目・小鳥の形の小さなマサパン。上だけに焼き色。札はカタルーニャ語とスペイン語の二通りで、箱9ユーロ、袋は小1.95ユーロ・大4.85ユーロ。トゥロン・ポルボロンとの詰め合わせの箱で買い、5月24日の夜にトゥロンと一緒に食べた。素朴な味で、アーモンドがやさしい | 手書きの旅日記・著者への聞き取り |
この菓子を買った店
- Casa Colominaバルセロナ・スペイン2010.05.22
- Dulces Martínバレンシア・スペイン2010.05.27
店名は写真の看板・値札・紙袋から起こしたもの。住所は写真に写っていたもの、または後から調べて確かめたもの。