郷土菓子

丸屋根のスポンジを、レモンのクリームで包む

デリツィア・アル・リモーネ

delizia al limone[deˈlittsja al liˈmone](イタリア語) / delizie al limone(複数形)

主な土地
イタリア・ソレントItalia / Sorrento
分類
ケーキ
主材料
小麦粉・卵・砂糖・レモン・牛乳・生クリーム
地方
カンパニア州 / ナポリ県
図版
1点
花模様の縁の白い皿に、紙の敷物を敷いてのせた丸屋根の形の菓子の大写し。全体がなめらかな淡いクリーム色のクリームで覆われ、てっぺんに黄色いクリームと小さな赤いいちごが一つ。皿の縁に赤い字で「La Zagara」。横にフォークが置いてある
図1皿にのせた1人分のデリツィア・アル・リモーネ。淡いクリーム色のクリームで覆った半球の上に、黄色いクリームを絞り、小さな赤いいちごをのせている。ウィキメディア・コモンズの説明は「ソレント」。皿の縁に「La Zagara」の文字がある写真:dags 1974(Flickr)/ウィキメディア・コモンズ(CC BY 2.0)

定義

デリツィア・アル・リモーネ(delizia al limone)は、ナポリ湾の南に突き出たソレント半島と、半島の南側のアマルフィ海岸の菓子だ。小さなスポンジ生地を半球の形に焼き、中にレモンのクリームを詰める。外側を覆うのも、生クリームを合わせたレモンのクリームだ。1人分の小さなもののほかに、大きなケーキに仕立てたものもある。名は「レモンのよろこび」ほどの意味だ。

由来

カンパニア州の農業部は、伝統の食べ物を紹介するウェブサイトで、1970年代にソレントとアマルフィの二つの海岸で生まれた菓子だと説明している。州のほかの菓子の多くより新しい。考えた人として名が挙がるのは、ソレント生まれの菓子職人カルミネ・マルツイッロ(Carmine Marzuillo)だ。2020年に彼が亡くなったとき、地元の新聞は、ホテルで働いていたころに考えた菓子だと伝えた。

ホテルの名を挙げる記事では、それはパルコ・デイ・プリンチピ(Parco dei Principi)だ。ただ、同じ名のホテルはソレントにもローマにもある。食の情報サイトはソレントのほうとし、食後の菓子を運ぶワゴンに載せる1人分の菓子として考えたとしている。甘すぎず、酸味をきかせたクリームだったという。大手の新聞社の料理雑誌は、ローマのほうの厨房で生まれたと書く。

1978年には、マルツイッロがこの菓子を料理人の協会の全国大会に出し、金賞を受けたという。のちにソレントの町に自分の菓子店を開き、市からは町の名誉の賞を贈られた。地元の新聞によれば、この菓子が広く知られるきっかけを作ったのは、料理人だった兄弟のアルフォンソだ。料理長を務めていた食堂の献立に入れ、そこからソレント半島の外へ広まった。

分布

ソレントのあたりもアマルフィ海岸も、レモンの産地だ。その土地で育てたものだけが、「ソレントのレモン(Limone di Sorrento)」「アマルフィ海岸のレモン(Limone Costa d'Amalfi)」を名乗れる。イタリアでは、州が選んだ伝統の食べ物を国が一つの一覧にまとめていて、この菓子は2001年からカンパニア州の品として載る。

ソレントの市長は2020年に、世界でソレントの町の象徴になった菓子だと語った。アマルフィ海岸の町ミノーリでは、菓子店サル・デ・リーゾ(Sal De Riso)が店の名物のレモンの菓子の一つに数える。二つの海岸の外にも広がり、イタリアのほかの土地や外国でも、まねて作られている。

ソレントの海岸の菓子店からカンパニア州じゅうの作り手へ広まった、と別の食の情報サイトは書く。ナポリでも、2026年の地元のウェブ記事が、中央駅に近いポルタ・カプアーナのあたりの菓子店カッラトゥーロ(Carraturo)で食べたい品の一つに、この菓子を挙げている。

構造と製法

州の農業部によると、クリームは牛乳と小麦粉、卵黄、レモン、砂糖、生クリームで作る。大きさは、土地によってまちまちだ。作りたてを食べる菓子で、作ってから3時間を超えて置くことはできない、と州は書く。一方、料理雑誌に載ったミノーリの菓子店サル・デ・リーゾの作り方には、冷蔵庫で2日ほどもつとある。

料理の記事に載る作り方では、生地はスポンジ生地だ。ナポリ近くの町トッレ・デル・グレーコの菓子職人の一家は、直径7センチほどの半球の型で焼く。中に詰めるのは2種類のクリームを合わせたもので、レモンの皮で香りをつけたカスタードクリームと、卵黄と砂糖、バター、レモンで作るレモンのクリームだ。型から出したら、レモンの甘い酒(limoncello)を加えたシロップで湿らせる。最後に、レモンのクリームと泡立てた生クリームを合わせて牛乳でのばし、上からかけて全体を覆う。

変種と周辺

名の似たナポリのデリツィオーザ(deliziosa)は、丸いタルト生地2枚でバタークリームを挟む別の菓子だ。スポンジ生地とレモンのクリームで作る点で近いのは、アマルフィ海岸のソスピーリ・アル・リモーネ(sospiri al limone)のほう。ソスピーロは「ため息」の意味で、いろいろな菓子の名にも使う語だ。

州によれば、ソスピーリは半円のスポンジ生地2枚でクリームを挟んだ丸い菓子で、レモンのクリームで覆ってから、表面を砂糖がけにする。100年あまりカスタードを詰めてきたが、いまはレモンのクリームに替わったという。国の伝統の食べ物の一覧には、デリツィアより1年早い2000年から載っている。

供される場面

おもに祝いの席に出す菓子で、結婚式では式のケーキの代わりになることが多い。食堂でも食後の菓子になり、ソレント半島の食堂ではデザートの品書きの主役だ、と食の情報サイトは書く。

この冬、確かめたいこと

州の説明には、シュークリームの皮のような生地で作る、と読める一文もある。海岸から離れたナポリの菓子店のものは、スポンジ生地なのか、それとも別の生地なのか。料理の記事の作り方は、直径7センチほどの半球の型を使う。店のものの形と大きさは、どれほど違うのだろうか。

リモンチェッロのシロップは、料理の記事の作り方に出てくる。店のものにも使っているのか。考えた人が狙ったという酸味は、どれほどきいているのか。州と料理雑誌とで日もちの書き方が違うので、店でいつ作るのかも聞いてみたい。地元の記事が挙げるカッラトゥーロでは、12月も店先に並ぶのか。

文献の記録

年記録資料
1989イタリアの食堂の案内に、店の品として「delizie al limone」(「gamberoni alla partenopea; dolce al limone; delizie al limone; dolce di mandorle」)『I ristoranti di Bell'Italia』(ミラノ、Giorgio Mondadori、1989)。電子化された本の文字の一部だけを読んだ(頁の画像は見られず、どの町の店かは分からない)
1989英語の旅行案内に「delizia al limone (a light sponge cake drenched in a delicious lemon sauce)」(レモンのソースにひたした軽いスポンジ生地)。食堂のデザートとして『All-in-one. Rome and surroundings』(ニューヨーク、Collier Books、1989)。ソレントやアマルフィの章もある案内。電子化された本の文字の一部だけを読んだ(頁の画像は見られない)
2001州が選んだ伝統の食べ物を国がまとめる一覧の、カンパニア州の180番に「delizie al limone」。2000年の最初の一覧には無かった。同じ一覧の210番に「sospiri al limone」イタリアの官報161号(2001年7月13日)37頁。農業林業政策省がカンパニア州とトスカーナ州の一覧を足した決定(2001年6月19日)(原文を開く)
2014食の情報サイトが、1978年にカルミネ・マルツイッロが考え、ローマとナポリの間の海辺の町フォルミアで、食通として名の知られたルイージ・カルナチーナが仕切った料理の集まりで初めて人前に出した、と書く。トッレ・デル・グレーコの菓子職人メンネッラ家の作り方(直径約7センチの半球の型、リモンチェッロのシロップ、上からかけるレモンのクリーム)を載せるロザリア・インペラート「Delizia al limone: la ricetta originale per farla come in pasticceria」(食の情報サイト スカッティ・ディ・グスト、2014年8月30日)(原文を開く)
2019カンパニア州の説明。1970年代にソレントとアマルフィの二つの海岸で生まれた。スポンジ生地の小さな菓子で、作り方ではシュー生地のような生地とも書く。3時間を超えて置けない。結婚式ではケーキの代わりになることが多いカンパニア州農業部「delizia al limone」(伝統食品の説明、2019年8月29日更新)(原文を開く)
2020マルツイッロ(1931年ソレント生まれ)の死去を伝える記事。イタリアの大きなホテルで働いていたころに考え、1978年に料理人の全国の会で、会長ルイージ・カルナチーナから金賞を受けた。食堂「フランチェスキエッロ」が出したことで広まった。ソレント市長は「世界で町の象徴になった菓子」と話すアントニーノ・シニスカルキ「Sorrento, morto il pasticciere Carmine Marzuillo: inventò la mitica delizia al limone」(ナポリの新聞イル・マッティーノ、2020年11月8日)(原文を開く)
2021「アマルフィ海岸の象徴の菓子だが、ローマで生まれた」と書き、70年代の終わりに、ローマのホテル、パルコ・デイ・プリンチピの厨房で、マルツイッロが考えたとする。生地は半球のスポンジ生地。冷蔵庫で2日ほどもつとも書くリディア・カパッソ「Delizie al limone」(『COOK』、大手の新聞社コッリエーレ・デッラ・セーラの料理雑誌、2021年7月号 24〜25頁)
2024ソレントでマルツイッロを記念する競技会。1978年の会を料理人の全国の協会の大会とし、兄弟のアルフォンソが料理長の食堂アンティーコ・フランチスキエッロが献立に入れて、ソレント半島の外へ広まった、と書く「Sorrento, concorso delizia al limone in ricordo dell'inventore Carmine Marzuillo」(ナポリの新聞イル・マッティーノ、2024年4月10日)(原文を開く)
20241970年代の半ば、ソレントの高級ホテル、パルコ・デイ・プリンチピの菓子職人だったマルツイッロが、デザートのワゴンに載せる1人分の菓子として考えた、と書く「La ricetta del dolce Delizia al limone che ha lanciato il limoncello」(食の情報サイト チーボトゥデイの編集部、2024年8月1日)(原文を開く)
2026伝統の食べ物の一覧の2026年版で、カンパニア州の432番「Delizie al limone」、507番「Sospiri al limone」イタリアの農業省が2026年2月に出した一覧の州ごとの表(原文を開く)
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