10 days in Myanmar


第一綴

 

ヨーロッパからの自転車旅の最後、上海から船で大阪の港に着いたあの日からすっかり一年半以上が経っていた。

いざ、海外に出ると決めたものの離陸直前までお店の事やスタッフの事、メール、原稿、支払い、精算、さまざまお縛りが頭に溢れていた。たったの10日だけど、心配事だらけだったのは楽観主義者のぼくには少し珍しいことだった。

当日夜の宿を空港に着いてから考えたあたりはちゃんと楽観していたけれど。21歳、初めての一人旅二日目で南イタリアのシチリア島でその夜の宿をどうしようかと海辺で熟睡していたのをふと思い出し、当時と大して変わっていない自分に半分安堵した。

7時間くらいの飛行機の中、ガイドブックを読んだり、映画を見たり、音楽を聴いたり、考え事をしたり。あと5時間、あと3時間、あと1時間、あと30分、到着予定時間を気にしながら知らない空気を目前に静かに心はウズウズしていた。

到着してみると久しぶりに吸った海外の空気は妙に臭った。もっとすんなり受け入れられるかと思っていたけれど、少し抵抗がある。こんなに臭かったかな、そう感じるのも身体がすっかり日本の環境に馴染んでいる証拠かもしれない。換金したミャンマーチャットのカビ臭さというともう度が過ぎて笑ってしまった。あれには発酵食品が根付くのにも大きくうなずける。空港で1300ドル程、10000チャット(900円程度)が最高額紙幣ということも知らず換金すると山のような札束が返ってきた。あれが1万円札ならもう車でも家でも買えてしまえそうな気さえするけれど、もうその分厚い束からは異臭しか放っていなかった。

空港からは13000チャットから9000チャットに値下げ交渉し、ボロボロタクシーで街へ向かった。布を張り合わせたようなシート、バックミラーにぶら下がる何か、横に居合わせた隣のドライバーとのコミュニケーション、窓全開の車内へ叩き込まれる生ぬるい空気、この生き生きとした現地臭さ、タクシーが街へ進むにつれてタイムスリップしていくかのような不思議な感覚だった。スーツから短パンTシャツへ、髪と無精髭が伸び、旅人に戻った。

 宿に着くともう随分遅かった。移動の疲れもあったので初夜はスーパーで必要なものを買い、タミンチョという炒飯、豚と筍の炒め物を地元民で賑わうローカルな店で食べた。お店選びが良かったのか料理は思った以上に脂っこくなく、美味しく頂けた。


出国まで

あと211時間